企業が取引を行うにあたっては、取引相手に関する情報を可能な限り収集し、その記録を後に検証可能なものとするために保存するという体制を構築することが大切である。 また、そこで得られた情報を自社のデータベースと突合し、相手方が反社会的勢力であるか否かを判断する体制を構築する。さらに、取引相手が反社会的勢力であると判明した場合には、反社リスク管理部門や外部専門機関と連携のうえ、取引拒絶を実行するという体制を構築する。
反社リスク管理部門
取引相手の審査は、取引相手に関する情報収集に始まる。 そこで、反社リスク管理部門は、取引相手の選定・交渉・審査を実施する部門と連携し、取引相手の情報取得を可能とする体制を構築する。 具体的には、以下の事項を規程・マニュアルに定め、事務フローに組み込むことが考えられる。
事務フローに盛り込む規定
- (1) 反社会的勢力チェックリストを作成し、取引開始にあたっては担当者にその作成・提出を義務付ける。
- (2) 商業登記簿謄本その他基本資料の収集を義務付ける。
- (3) 取引担当者に対し、取引相手の訪問を義務化する。
- (4) (1)~(3)を記録として相当期間保存することを義務化する。
- (5) 取引相手からの情報収集の仕方、観察の仕方について、研修を実施する。
チェックリスト
取引先に関して収集すべき情報の具体例としては、以下の項目がある。これらをチェックリスト化するとよい。
登記やクレームの有無
- (1) 特定情報(氏名、代表者など)
- (2) 商業登記簿記載情報(役員、事業目的など)
- (3) 主要取引先
- (4) ビジネスモデル
- (5) 苦情・告発・クレームの有無・程度
- (6) 事業所や従業員の雰囲気
- (7) その他担当者の雑感も含めた風評・雰囲気
反社データベース
取引相手に関する情報を得たら、これを反社データベースと突合する。また、そのことを規程・マニュアルなどでルール化し、事務フローに組み込む。
大量の契約を審査しなければならない場合はシステム構築も必要となろう。
怪しい雰囲気
事前審査において重要なのは、取引の相手方が公開している形式的な情報だけではなく、「雰囲気」といった不確定な情報も広く積極的に収集することである(この点で、担当者の取引先訪問などは重要である)。 なぜなら、契約締結時には契約締結の自由(契約を締結しない自由)があるから、具体的な情報がなく、反社会的勢力データベースにヒットしない場合であっても、いかにも怪しい雰囲気を醸し出す取引相手であれば、契約を締結しないという判断をすることも可能だからである。
既存の与信審査体制の活用
これらの情報収集活動は、企業が通常行っている与信審査に近い。したがって、すでに与信審査体制を運用しているのであれば、これを参考にして反社会的勢力に関する審査体制を構築し、あるいは与信審査体制それ自体をバージョンアップして、反社会的勢力審査を取り込んでしまうという方法もありうる。