民法総則の解説

(後見開始の審判の取消し)
第十条 第七条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。



(保佐開始の審判)
第十一条 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。



(被保佐人及び保佐人)
第十二条 保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。



(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
2 家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

≪解説≫

保佐開始の審判があると、保佐人が選任されます(12条)。

被保佐人(本人)は、原則として、みずから行動して、法律行為をすることができます。
保佐人は、後見人とは異なり、代理権を有しないのが原則です。

本人は、重要な財産上の行為等については、保佐人の同意がなければ、行動できなくなります(13条1項2項)。
13条は、繰り返し読む必要があります。

保佐人の同意を要する場合に、保佐人の同意を得ないでした行為は、取り消すことができます(13条4項・120条1項)。
本人および保佐人が、取消権者です。

保佐人の同意を要する場合に、保佐人の同意を得ないでした行為について、保佐人は、追認することもできます(122条)。

なお、家庭裁判所は、保佐人の同意に代わる許可を与えることができます(13条3項)。


≪解説≫

保佐人の権限を、まとめてみましょう。

同意権あり、取消権あり、追認権あり、代理権は原則なし、ということになります。

未成年者の法定代理人や成年後見人との対比で、確認してください。


      同意権取消権追認権代理権
親権者
未成年後見人
あり
(5条1項)
あり
(120条1項)
あり
(122条)
あり
(824条・859条)
成年後見人なし
(9条)
あり
(120条1項)
あり
(122条)
あり
(859条)
保佐人あり
(13条の場合)
あり
(120条1項)
あり
(122条)
ないのが原則
(例外876条の4)

家庭裁判所は、請求により、特定の法律行為について、保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができます(876条の4)。
この場合、保佐人は、当該特定の法律行為について、代理権を有することになります。


≪解説≫

13条1項2項を、整理しておきましょう。

  保佐人の同意を要する行為(13条)同意を要しない行為
1号元本を領収・利用すること利息・家賃の受領
2号借財・保証をすること  
3号不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を
目的とする行為をすること
  
4号訴訟行為をすること  
5号贈与・和解・仲裁合意をすること(贈与を受けること↓)
6号相続の承認・放棄、遺産の分割をすること  
7号贈与の申込みを拒絶、遺贈を放棄、負担付贈与
の申込みを承諾、負担付贈与を承認すること
負担なしの贈与を受ける
こと*
8号新築、改築、増築または大修繕をすること**  
9号602条に定める期間を超える賃貸借をすること短期賃貸借***
2項上記のほか、審判で決められた行為日用品の購入
日常生活に関する行為

  * 未成年者でも、単に権利を得る行為は可(5条1項ただし書)。負担があるときはダメ。
 ** 請負契約は同意を要するという意味。
*** 建物の賃貸借なら、3年までは可(602条3号)。