民法総則の解説
(成年)
第四条 年齢二十歳をもって、成年とする。
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
≪解説≫
1 権利能力と行為能力
権利能力は、権利義務の主体となりうる資格。
これに対し、行為能力は、単独で、取引できる能力です。
2 未成年者に行為能力が認められる場合
(婚姻による成年擬制)
未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなされます(753条)。
婚姻した未成年者は、単独で、有効な取引ができます。
婚姻後も親権に服するというのは適切でない、と考えられるからです。
(営業許可)
一種または数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有します(6条1項)。
3 法定代理人の同意
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければなりません(5条1項本文)。
同意を得ないでした法律行為は、取り消すことができます(5条2項)。
行為前にするのが、同意。
行為後に了承するのは、追認です(122条)。
5条は、同意が、未成年者に対してなされることを想定していますが、取引の相手方に対して同意してもよいと解されています。
未成年者の「法定代理人」は、普通、親権者です(824条本文)。
ただし、未成年後見人が法定代理人となる場合もあります(838条1号)。
法定代理人が代理して法律行為をする場合、同意は、問題になりません。
未成年者自身が行動するなら、法定代理人の同意が必要、という意味です。
赤ちゃんは、つねに法定代理人によって、代理されることになります。
胎児は?・・・胎児の代理は、だれもできない。そうでしたね。
4 同意を要しない場合
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならないのですが、これには、次のような例外があります。
<例外1>
単に権利を得、または義務を免れる行為については、法定代理人の同意を要しません(5条1項ただし書)。
未成年者に不利益がないからです。
負担付きの贈与は、単に権利を得るだけではないので、法定代理人の同意が必要です。
<例外2>
許された財産の処分については、法定代理人の同意を要しません(5条3項)。
法定代理人が、包括的に許しているため、個々の行為の都度、いちいち法定代理人の同意を得る必要はない、という意味です。
5条3項前段は、目的を定めた場合です。たとえば、テレビゲーム機を買うために3万円を渡した場合、その目的の範囲で使ってよいことになります。
5条3項後段は、目的を定めない場合です。たとえば、小遣いとして、1万円を渡した場合、何に使ってもよいことになります。
<例外3>
許可された営業を行うには、法定代理人の同意を要しません(6条)。
これも、法定代理人が、包括的に許しているため、個々の行為の都度、いちいち法定代理人の同意を得る必要はない、という意味です。
これらの例外について、未成年者は、単独で、有効に行為できます。
もちろん、あとで取り消すことはできません。